神戸市垂水区の動物病院ジェームス山ペットクリニック

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ドクターズメモ 復刻カルテno2

2009/01/09

ドクターズメモ 復刻カルテno.2

2009年最初のドクターズメモは、2005年に掲載した、

当院しつけ教室の出発とそこに乗せた想いです。
「人と動物が幸せに暮らせるように」という願いは、
当時も今も変わりません。




 


獣医師会は被害の少なかった垂水区、西区、北区の先生が主体となって1月27日動物救護センターを立ち上げました。動物管理センターの協力を得て、敷地内に農家から借りたビニールハウスを建て、他県の獣医師や動物福祉協会の方々の協力でやっと被災動物を受け入れられる施設を造りました。

 
飼い主を失った犬や猫。家を失った飼い主に一時預けられ、または放棄された犬や猫。瓦礫の下から助け出され怪我をしている動物たち。伝染病の犬や猫。各地から集まるボランティア。

私たちは毎日が野戦病院のような忙しさでした。  

救護された動物は一匹たりとも安楽死をしないというスローガンのもとに始めたので、老犬も病犬も噛み付く犬も猫も全部世話をしなければなりませんでした。
 
犬のお散歩ボランティアは来てくれたけれど、性質のわからない他人の犬を上手に扱える人はごくわずかです。そんな中で私は中塚トレーナーと出会いました。彼女もボランティアとして参加してくれていたのです。
朝夕の散歩の時が一番神経を使うときでした。ケージから出そうとすると噛み付く犬、出たとたんに引っ張る犬、逃げようと必死の犬、喧嘩っ早い犬、etc.・・・・。

私も開業して20年たっていましたから日本の犬のしつけの程度はわかっていましたが、「日本の犬はなぜみんなこんななの?」と泣けてきました。従順で、穏やかで、陽気で、かわいい、と思える犬はほんの一部でした。

飼い主には従順でやさしい犬でも、いきなり環境が変わり恐怖にさらされたのですから、犬の気持ちとしても初めのうち
他人、他犬は拒否するのはわかります。けれど、1ヶ月経っても2ヶ月経っても、問題児は多かったのです。


 社会性なし

・ 他人になつかず、攻撃的
・ 犬にも攻撃的
・ 犬同士のコミュニケーションの仕方がわからない。(無作法もの)
 分離不安

・ 人間の傍にいないとずっと鳴いている。(飼い主はいないのだから無理)
 要求が通らないと泣きわめく。(要求に答えていたら生活できません)
 エネルギーが有り余っている。(ソリでも引かせたかった)
 よれよれの老犬(これは仕方ない、手厚く世話するのみ)


でした。

しかし1年4ヶ月の間には、多くのボランティアのやさしさに触れ、多くの犬仲間とふれあい、飼いやすい犬に変身して幸せをつかんだ子がたくさんいます。

私も一匹引き取りました。あえてこの言葉を使ったのは、その犬がとても頑固で人には慣れたけど犬に喧嘩をうる犬で、足も悪く引き取り手がなかったので最後まで残ったからです。

私は当時6匹の犬を飼っていましたが、あえてみんなと家の中で飼い、「私が親分、私の前で喧嘩をするな。散歩中に吠えつくな。」としつけました。いったん信頼関係ができるとみごとに変身し、とても賢く言葉を理解する犬になりました。けっして若い犬ではありません。7~8歳になっていました。犬はしつけ方によって、若くなくても変えることができるのです。

私が中塚トレーナーと散歩指導や犬の扱い方を教えながら、しつけの重要性を語り合ったあと、私はお客様に声をかけてしつけ教室を開いてもらいました。私も生徒として7歳の雑種犬を連れて参加しました。
とてもよく言うことを聞くようになり、どんな犬とも喧嘩することなく人にもやさしかったので老人ホームの訪問活動にいつも連れていきました。

私の願いは、いつ起こるかわからない飼い主の環境の変化。それをまともにこうむる犬が、次の飼い主に喜んで受け入れられる性質になっていてほしいと思うのです。そうすれば処分される犬の数は確実に減るでしょうから。

震災から10年。多くの犬たちはもういなくなっているでしょう。人々はその恐ろしさ、辛さ、悲しさを永々と引継ぎ忘れないでしょう。でも動物たちの記憶にある震災はあと5年もしたらなくなってしまうでしょう。

多くの人々は動物救護センターがあったことすら知らないのです。悲しい動物たちがいたことを憶えておくのは人間しかいないのです。
かわいそうな子をつくらないようにするのは飼い主の責任です。犬を飼うことは、子供を持つと同じように責任をおうことです。かわいいと思って飼ったその初心を忘れないよう、初心を忘れさせるような犬にさせないよう どうぞ、正しいしつけ方を飼い主が覚えてください。最低3年間の教育で残りの10年間は犬との楽しい生活を送れるのですから。

犬は苦労して飼い続けるものではありません。楽しむものです。
頑張ってしつけに取り組んでください。

あなたとあなたの愛犬が終生よきパートナーであり続けるために・・・・。


追記(2009.1.1)

震災から14年がたちます。 人々は縁のあった人の死を悼み、毎年光を灯します。

しかし、被災した動物たちはというと、ほとんどが死んでいて人々の記憶から薄らいでいると思います。 皆様の好意でたくさんの犬・猫を引き取っていただきましたが、飼いやすい子もいれば、飼いにくい子もいたと思います。 上にも書きましたように、人になつかず、犬になつかずいつまでも引き取られなかった犬のことを思うと、正しく飼い、しつけをきちっとしていれば、もっと皆様に良い思い出をあげられたと思います。
 
最近は動物が飼えるマンションが多くなってきていますが、けっしてマナーが良いとはいえません。(赤ちゃんはいずれ泣きやみますが、犬は鳴きやみません) マンションだから飼えないという声が無くなることを願っています。
 
それから、今でもシェルターには放棄されたたくさんの子が引き取り手を待っていることも忘れないでください。

 
動物は楽しく飼うものです。あなたを癒してくれるように・・・・・。
 

院長  小林